片ネジ管・両ネジ管・ねじなし管とは?用途に応じた選び方のポイントを解説
建築設備配管において、「片ネジ管」「両ネジ管」「ねじなし管」という言葉は頻繁に登場します。どれも鋼管(SGP管など)をベースとした配管材料ですが、それぞれの特性や用途を正しく理解していないと、施工上のトラブルやコストの無駄につながります。この記事では、現場経験者・施工管理者・設備設計者向けに、3種類の管の違いと使い分けのポイントを詳しく解説します。
1. ネジ付き管・ねじなし管の基本構造
鋼管を配管として使用する際には、接続方法として大きく次の2種類があります。
- ねじ接続(スレッド接続)
- 溶接・ねじなし継手接続(メカニカル接続)
ねじ接続の場合、管端部にテーパーねじ(Rcねじなど)を切り、継手(ソケット、エルボ、チーズなど)と噛み合わせることで接続します。一方、ねじなし配管では管端にねじを切らず、圧着式や溶接式の継手を使用します。
ネジ加工を施した鋼管を「ねじ込み管」と呼び、その中でも「片ネジ管」「両ネジ管」に分類されます。ネジを施さない管が「ねじなし管」です。
2. 片ネジ管とは
片ネジ管は、その名の通り片側だけにネジを切った鋼管です。反対側は平滑な切り口(切断面)になっており、次のような特徴を持ちます。
■ 特徴と用途
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ネジ加工 | 片側のみ(もう一方は切断端) |
| 主な用途 | 配管端部、継手への接続側、立ち上がり配管など |
| メリット | 現場での調整が容易、余分な継手を省ける |
| デメリット | 接続方向が限定される、再利用性が低い |
例えば、配管の端部に止め栓や機器接続がある場合、片ネジ管を使うことで一方をねじ込み接続、もう一方を溶接や切断で現場寸法に合わせられます。
工場であらかじめ寸法加工しておくことも多く、施工精度を高めつつ現場加工を減らせるというメリットがあります。
■ 使用例
- 給水立ち上がり管の末端(バルブ接続部)
- 機器への最終接続(ボイラー、ポンプ、メーターユニットなど)
- 機器交換を想定した配管末端のねじ込み箇所
3. 両ネジ管とは
両ネジ管は、両端にネジを切った鋼管で、配管の中間部や継ぎ足し部分に多く使用されます。両側にソケットやユニオンを取り付けることができるため、長さ調整や分解交換が必要な部分に最適です。
■ 特徴と用途
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ネジ加工 | 両端ともねじ切り |
| 主な用途 | 管の延長・接続、現場調整、ユニオン接続部 |
| メリット | 接続自由度が高く、施工後の交換が容易 |
| デメリット | 継手が2個必要なためコスト増、漏れリスク増大 |
特に機械室やメンテナンス性を重視する配管では、両ネジ+ユニオンを組み合わせて機器を簡単に脱着できるように設計されるケースが多いです。
ただし、ねじ部が多いほど漏水リスクも上がるため、施工時のシール材処理とトルク管理が重要です。
■ 使用例
- 給湯配管や空調配管の機器接続部
- メンテナンスを想定した配管ジョイント部
- 鋼管延長の際の調整配管
4. ねじなし管とは
ねじなし管は、管端にネジを切らない鋼管のことです。施工方法は溶接、またはねじなし継手(圧着式・溝付きジョイントなど)による接続が主流です。
■ 特徴と用途
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ネジ加工 | なし |
| 主な接続方法 | 溶接・ねじなし継手(ワンタッチジョイントなど) |
| メリット | 漏れリスクが低く、耐震性が高い、施工が速い |
| デメリット | 専用工具が必要、部材コストがやや高い |
ねじなし管は、特に空調配管・消火設備・高層建物の幹線などで採用が進んでいます。圧着継手や溝付き継手を使用することで、施工スピードが大幅に向上し、ねじ切りやシール作業が不要になります。
また、耐震性にも優れ、長期的な漏れ対策やメンテナンス性の向上にも寄与します。
5. 材質・規格の違い
建築設備で使われる鋼管の代表的な材質・規格を以下に整理します。
| 規格 | 名称 | 主な用途 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| SGP | 配管用炭素鋼鋼管 | 給水・給湯・消火 | 一般配管向け、溶接・ねじ接続両対応 |
| STPG | 圧力配管用炭素鋼鋼管 | ボイラー・冷温水 | 耐圧性能が高く溶接施工に適する |
| SUS304 | ステンレス鋼管 | 給水・純水 | 耐食性に優れ、衛生配管に使用 |
| C-PVC・HT管 | 塩ビ管 | 排水・化学薬品ライン | 軽量で施工性良、耐薬品性あり |
このうち、片ネジ・両ネジ・ねじなしの違いが生じるのは主にSGP管です。SGPはJIS G 3452に規定されており、ねじ加工や溶接、メッキ処理(白管・黒管)など多様な施工方法が可能です。
6. 配管種別による使い分けの実例
■ 建築設備における一般的な使い分け
| 系統 | 主な使用管 | 備考 |
|---|---|---|
| 給水配管 | 片ネジ管・両ネジ管(白管) | 継手接続が中心。末端は片ネジが多い。 |
| 給湯配管 | 両ネジ管・ねじなし管 | 温度変化に伴う伸縮を考慮しユニオン使用。 |
| 消火配管 | ねじなし管(黒管) | 耐震性重視。溝付きジョイント多用。 |
| 空調冷温水配管 | ねじなし管 | 圧力損失低減・施工性重視。 |
| 排水配管 | 塩ビ・鋳鉄管が中心 | 鋼管は限定的。 |
このように、ねじ付き管は小口径で短距離、ねじなし管は中大口径で長距離という使い分けが一般的です。
7. 選び方のポイント
配管の種類を選定する際には、以下の要素を総合的に判断する必要があります。
① 施工環境
狭小スペースや天井裏などではねじ切り作業が困難なため、ねじなし配管やプレファブ加工が有効です。
② 耐圧・耐食性
水質や温度条件により、亜鉛めっきの有無やステンレス管への変更を検討します。特に給湯配管では腐食対策が重要です。
③ 施工効率
ねじなし管は初期コストが高めですが、施工スピードが速く、長期的には工期短縮・人件費削減に貢献します。
④ 保守・交換性
頻繁に機器交換が想定される箇所は、ユニオン+両ネジ管で分解・交換を容易にします。固定配管はねじなし管で耐久性重視。
8. 現場での判断基準と注意点
■ 現場調整時の判断
- 長さ調整が必要な場合:両ネジ管
- 機器端部・末端処理:片ネジ管
- 長距離・高所・幹線配管:ねじなし管
■ 注意すべき施工上のポイント
- ねじ込み部にはシール材の塗布方向・量を正確に守る
- ねじ山の損傷やバリを放置しない
- ねじなし継手は規定圧での圧着・溝加工精度を確保
- プレファブ加工品との寸法誤差をミリ単位で管理
9. コスト比較(目安)
| 種類 | 材料コスト | 施工コスト | 総合コスト | コメント |
|---|---|---|---|---|
| 片ネジ管 | 低 | 中 | 低 | 端部限定に有効。小規模向き。 |
| 両ネジ管 | 中 | 中 | 中 | 調整自由度高く、汎用性あり。 |
| ねじなし管 | 高 | 低 | 中~低 | 長期的には最もコスパ良。 |
10. まとめ
片ネジ管・両ネジ管・ねじなし管は、いずれも目的に応じた使い分けが不可欠です。
短距離・調整性重視なら片ネジ・両ネジ管、長距離・耐久性重視ならねじなし管が基本的な選択基準です。
施工性・保守性・コストのバランスを考慮し、配管計画段階で最適な方式を選ぶことが、品質と安全性の両立につながります。
特に昨今は、ねじなし継手の普及やプレファブ化の進展により、従来のねじ接続からメカニカルジョイントへとシフトが進んでいます。
現場での確実な判断力と、材料特性の理解が、配管品質の差を生み出す時代です。

